AI時代の精神医療について、ちょっと大まじめに考えてみる

この連休で、三男息子とバイオハザード・ファイナルを観てきました。ネタバレするので詳細は申し上げませんが、この映画のもう一人の主人公は”AI(人工知能)”です。
AIが世界を支配している物語です。
今日の日経新聞でも、社説や記事を含めてAIの話題は6本ありました。
朝日新聞でもAIの特集がありました。
今年のトレンドは、明らかにAI(人工知能)です。
ということで、今日はAIは人間の代わりになるか。特に私の生業である精神科医はどうなるか、考えてみたいと思います。
今後人間が行う仕事の半分は、AIが代わりにやるとの予測があります。特に単純作業や秩序を重視する仕事は、AIに取って代わられると言われています。
具体的には、一般事務や受付、自動車組み立てや宅配等がAIが代わりに行える仕事に挙げられています。
自動運転の技術が進めば、運転業もAIがやってくれそうです。
ひるがえって、自分の仕事である精神科医はどうでしょうか?
精神科医の仕事には、診断と治療があります。
このうち、診断についてはAIが代わりに行う時代がくるでしょう。
我々精神科医は患者さんとの面談を重ね、経験値を積み重ねて診断技術を高めます。
20年近くやっていると、「あっ、このAさんは前に診察したことのあるBさんと似ている」てな具合で、パターン認識ができます。
なのでパターン認識が豊富なドクター、つまり臨床経験が豊富であればあるほど、診断の精度が高まります。
他科は知りませんが、精神科・心療内科は年配のドクターの方がより診断技術は高い傾向にあります。
近未来では、その診断技術は、AIの方が勝るようになります。
深層学習という方法により、AIがパターン認識を爆発的に増やすことができるようになります。
ベテラン精神科医が経験した症例パターンを、短期間で取得できるようになります。
その結果、診断精度が高まり、診断がより速く正確に行われるでしょう。
現時点でも、患者さんはこちらへいらっしゃる前に、インターネットで自分の症状を検索する事が多いです。
このやり方は良いかどうかは別にして、診断に関してはAIが勝ると考えています。
しかし治療に関しては、医者の方がAIに負ける事はないでしょう。
確かに遺伝子技術が進んで、この患者さんにはこの薬が合いますよ。その治る確率は○○パーセントです、みたいな判断はAIがしてくれそうです(それに似たシーンが、映画バイオハザードでもありました)。
薬の選択に関しては、AIが勝るでしょう。
でも精神科の治療にはもう1つあります。
そう、言葉の治療つまり精神療法です。
これはさすがに、AIには難しい。
というのは、精神療法は患者さんとの即興で成立します。
患者さんごとにお悩み、考え方、人生が違うため、同じ精神療法は1つとしてありません。
100人患者さんがいたら、100通りの言葉かけや対応の仕方があります。
「この言葉を言えば必ず元気になる」といった法則は無く、患者さんと向き合った時の雰囲気や話の流れで、臨機応変に話を変えていく必要があります。
AIは、ルールや規則のある仕事は得意ですが、ジャズや精神療法など、いわゆるアドリブセッションは得意ではありません。
ジャズや精神療法では、お互いのプレーヤーを思いやる協調性と、この音とこの音を組み合わせたらどうなるか、創造性が必要になります。
協調性と創造性は、我々人間が人間たる所以の能力です。
これはAIが絶対に人間を超えられないところです。
実際、企業で行われているストレスチェック表を見ると、その従業員へのアドバイスがどうにも読みにくい。
「無理しないで」とか「生活を振り返りましょう」とか優しい言葉ではあるけど、どうにも読みにくい。
なんというか、こころに響かないのです。
恐らくこのストレスチェックのアドバイスが、AIが答えているからでししょう。
その人の実情にあったアドバイスではないため温かさがなく、アドバイスとして頭に入らないのだと考えます。
ビバ!人間。
ということで、今回はAIが精神科医に取って代わるかを考えてみました。
AIの技術は今後ますます進歩します。
大事なのは、人間が得意な事とAIが得意な事をしっかり見極める事です。
そして今後人間は、人間しかできない事、特に創造性や協調性を磨いていくべきです。
将来、AIがアシスタントとして診察室にいるかもしれません。
人間とAIどっちが良いか競うのではなく、お互い協調して患者さんをよりよい方向に導びければ、それが幸せなのです。
以上、バイオハザードからお伝えしました!!